タイミングって大事だよね。何もきっかけがなければそんな話をすることはできないだろう。
 誰も他意があって黙っていたわけじゃない。悪意なんてどこにもなかった。
「不思議だね。知ったときは衝撃が大きすぎて受け入れられないと思った。でも、少し時間が経っただけなのに、今は普通に受け入れられる」
「本当に大丈夫?」
「うん。大丈夫」
 今度こそ、本当に大丈夫だよ、と伝えたくて身体を起こした。
「大丈夫。だから、そんな顔しないでね」
 唯兄の頬を人差し指が沈むくらいにつついて、お餅みたいなほっぺだな、と思ったら自然と笑みが漏れた。

 朗元さんと話さなくちゃ――。
 朗元さんと会長は同一人物だけど、まだ私の中ではひとつにはなりきっていないから……。だからふたりと話をしなくてはいけない。
 大丈夫……。
 いつかはわからないし、どんな形でかもわからない。でも、朗元さんはきっと私と話す時間を取ってくれる。
 そんな、根拠のない確信が私にはあった。