美声――なんて思っていられたのは束の間。急に一オクターブ上げ裏声で歌い始めた。
 音程を外さないボーイソプラノのような声に、その場の人は様々な反応を示す。私と蒼兄は絶句した。お母さんは口に手を当てて目を白黒とさせ、お父さんはしばらくしてから拍手を始めた。
 この場には藤宮警備の社長さんもいるのに、そういったことは全く気にしていないみたい。
「ひょっとして、唯って酒弱い?」
 私たち家族が気づいたのは、唯兄の目がとろんとして、軟体動物のような動きをするようになってからだった。

 唯兄はお父さんと蒼兄に抱えられてゲストルームに帰還。
 意識のない唯兄をロフトへ上げるのは危ないから、と唯兄は一階のベッドに寝かされた。