「らしいっちゃらしいけどね」
 クク、と唯兄が笑う。
 私と蒼兄が唯兄を見ると、
「だってさ、湊さんって結婚式とかまともに祝われるの嫌がりそうじゃん。恥ずかしくて死ねるとか言いそう」
「でも、自分の誕生日なら普通に祝われるってこと?」
 蒼兄の言葉に唯兄が大きく頷いた。
「普通に考えてみてよ。オーナーの結婚式ならもっと大々的にやってもおかしくないじゃん。それをこんな内々で済まそうってところに作為性を感じるよね」
 言いながらグラスを空けた唯兄に影が落ちる。
「あんた、ほんっとにいい勘してるわね? 大当たりよ。そんなあんたにはバースデーソングを歌わせてあげようじゃないの」
 湊先生はにこりと笑って唯兄の膝の上にマイクを落とした。
 思わぬところで唯兄の歌を聞くこととなる。聞き慣れた声に音程とリズムがつくだけで同一人物の声とは思えないほど。