ブーケトスをしなかった理由は、園田さんの結婚が決まっていたからか、ゲストの中に未婚女性が私と園田さんしかいなかったからだろう。
 そのほか、主役が高砂に座るでもなければ司会もいない。ケーキカットやキャンドルサービスがあるでもない。当然、お父さんやお母さんへ向けて手紙を読むシーンもなく、主賓の祝辞も友人のスピーチも何もなかった。唯兄曰く、「型破りすぎる披露宴」。
 昨夜の晩餐会のように運ばれてきた料理を歓談しながら美味しくいただく。それだけ。
 何か違うことがあるとすれば、まだ明るい時間であることとみんなが昨日よりも数段ドレスアップしていることくらい。
 一通り料理を食べ終わると大きなケーキが運ばれてきた。
 けれど、それにはたくさんのロウソクが立てられていて、火が灯されている。つまり、ケーキカットのために用意されたものではなく、湊先生の誕生日のために用意されたケーキだということ。
 考えてみれば、乾杯の音頭も「ハッピーバースデー」だった。