「それは義父のことでしょうか?」
「ギフ」を「義父」に変換するのに少し時間がかかった。
「義父とは、陶芸作家朗元のことです」
 補足され、目を逸らした時点で肯定したも同然。勝ち負けを争っていたわけではないけれど、なんとなく負けた気分。
「私からお教えすることもできたのですが……」
 その言葉に視線を戻す。
「義父が話すタイミングを計っているようでしたので……。驚かせてしまって申し訳ございません」
「朗元さんが……?」
 タイミングを計っていた……?
「えぇ。義父も黙っているつもりはなかったようです」
「……実は、さっき朗元さんに謝られてしまいまいました。驚かせてすまないって……」
「そうでしたか」
「はい」
 私と涼先生の周りだけ、場にそぐわない空気が漂う。ここだけ切り取ったみたいにほかの音が聞こえなくなった。