曲が流れ、涼先生と湊先生がホール中央で曲に合わせて踊りだす。
 スティーヴィー・ワンダーの「I just called to say I love you」。
 大好きな曲だからアーティスト名も曲名も覚えている。もともとはポップな感じの曲だけど、今は弦楽器によってしっとりと演奏されている。
 メロディーも好きだけれど、何よりも歌詞が好き。
 お父さんから娘に、娘からお父さんに。どちらであってもすてきな選曲だと思う。
 これは私の勝手な想像だけれど、涼先生と湊先生が普段からこんなやりとりをしているとは思えない。どちらかと言うなら、皮肉めいた会話のほうが想像しやすい。間接的に伝えるにしても、なかなか素直になれないような……そんなイメージ。
 でも、結婚式当日なら……? 普段より少しだけ素直になれたりするのかな。
 なかなか口にはできないけれど、いつだって想ってる。愛してる――。そんな想いを通わせながら踊っているように見えた。
 曲が終わるとパートナーが替わる。湊先生の次なるパートナーは静さん。
 こちらは、「ティファニーで朝食を」という映画に使われていた曲、「ムーンリバー」に合わせてのダンスだった。