「御園生はさ、まるで"ごめんなさい"を言う顔をして"ありがとう"って言うんだ。でも、最近は少し変わってきたから。海斗はそれが言いたいんだろ?」
 佐野くんが海斗くんを振り返ると、
「そうそう、"心配かけてごめんなさい""迷惑かけてごめんなさい"。それがやっと抜けて"ありがとう"って言ってくれるようになったのに、顔が伴ってないこと多々」
 海斗くんがイヒヒと笑う。
「でも、さっきの"ありがとう"は顔もちゃんと"ありがとう"だったよね!」
 と、飛鳥ちゃんに抱きつかれた。
「飛鳥、階段で抱きつくのはやめなさい」
「立花、階段で抱きつくのはやめておけ」
 桃華さんと佐野くんが口を揃えて同じことを言う。
 言われた飛鳥ちゃんはしゅんとし、私と海斗くんは目を見合わせて笑った。
「おまえたち、前世では双子なんじゃね?」
「桃華さんと佐野くんの言葉が重なるの、よくあるよね?」
 そんな話をしているうちに保健室に着いてしまった。
「次は生徒総会だから、私と海斗桜林館に直接行くけど、佐野と飛鳥が迎えにくるわ」
 桃華さんにそう言われて保健室の前で別れた。
「またあとで来るからねーーーっっっ!」
 飛鳥ちゃんは器用に後ろ向きで歩いている。……というよりは、海斗くんと桃華さんに引き摺られて歩いている、というのが正しい気がする。
 みんなに手を振ってから保健室に入った。