それは言動。
 言葉に切れを感じない。
「怖い顔……」
 越谷は眉をひそめて見せるも、声は愉悦に満ちていた。
「このストラップをあなたに渡したのは秋斗様? それとも、司様? そういえば……あなた、藤宮の次期会長ともお知り合いなのね?」
 翠は黙秘を通していた。
 けれども、少し肩を震わせている。
 それは見るものによっては動揺と解釈される。
「答えてくださらないとつまらないわ」
「……携帯を返してください」
 翠は口を開けばそれしか口にしなかった。
「あら、携帯だけでいいの? このストラップ、私がいただいてもいいかしら?」
 ビクリ――翠の身体が大きく揺れる。
「あなた何も知らないのね? 落し物を拾った人は報労金がいただけるのよ?」
 ――疑惑は晴れた。