「私、この中身、全部見てしまったの。そしたら、なぁに? あなた、秋斗様とも個人的にずいぶんと親しくていらっしゃるのね? 藤宮一族でもなく、内進生でもないのにどうしてかしら」
「っ……それは、兄が秋斗さんの後輩だからです」
 前にも訊かれたことがあるのか、兄つながりの知り合いと答えるまでに時間はかからなかった。
「ふぅん……それにしては、秋斗様からのメールの熱烈ですこと。それなのに、司様にも色目を使って……」
「違うっ」
「あら、何が違うのかしら? 藤宮の殿方をふたりも手玉に取っている方の言葉とは思えないわ。……これ、篠塚さんの作品よね?」
 翠は何も答えない。もっとも、秋兄が話していないのなら知らなくても無理はない。
 幼稚部から藤宮学園の人間なら篠塚宝飾店を知らない人間はいないだろう。