赤外線通信とメモリカードの書き込みができなかったことは本人もわかっているだろう。
 それでも強気でいられるのは、パソコンへ転送したときにはエラーメッセージが表示されなかったから。
 それらすべてが唯さんの目論見どおり。
 ――「法律ってさー、結構色々と面倒なんだよね。別に携帯を見たくらいじゃ何も処罰なんて与えられない。プライバシーの侵害って言うけれど、言われるだけ。処罰できる刑法が存在しないんだから仕方ないんだけどさ。たとえ、リィが携帯にロックをかけていたとしても、それを解除したくらいじゃ罪には問われない。もっと突っ込んで言うなら受信済みのメールを見たとしてもなんの問題もない。問題になるのは他人が手にしているときに受信したものを見ちゃった場合。未開封のメールを見ると信書開封剤が適用されるけど、ほかのものに関しては該当しない。不正アクセス禁止法に触れるには、サーバにアクセスすることが前提だし……。そうだなぁ、リィの携帯を一時的に持ち出して、どこかにメールを送ったとしても、そのあと携帯を元あった場所に戻せば窃盗罪にもならない。あぁ、この場合は元の場所に戻しても通信した時点で使用窃盗っていう罪にはなるんだけど」
 唯さんが世間話でもする要領で垂れ流していたこと。