有無を言わさずにカップをふたつ手に持つと、先を歩きリビングへと向かった。
 私はそのあとをついていく。
 ダイニングのテーブルとお揃いのローテブルにカップを置くと、お話をする準備が整った。
 さっきと違うことといえば、スツールではなくラグに座っていること。
 それから、秋斗さんが正面ではなく私の右側に座っていること。
「前にもこうやって隣に並んで話したことがあったよね」
「はい」
 記憶の取り出しはとてもスムーズだ。
 秋斗さんが言う「前」は、幸倉のおうちでのことだと思う。
 あのときは秋斗さんの女性遍歴を聞いたのだ。
 話す内容は違う。
 それでも、あのときと同じようにどこか緊張した空気があり、話す内容はあまり明るい話題ではない。
 そんな共通点があった。