『リィー? 今どこ?」
「今、秋斗さんと一緒にマンションへ帰ってきたところ」
『あぁ、話に行ったの?』
「うん。でも、まだもう少し時間がかかるの」
『それっていうのはうちで話すってこと?』
「ううん、秋斗さんのおうちにお邪魔することになった。お母さんは帰ってきてる?」
『うん。帰ってきた。で、リィの帰りが遅いって心配してるから電話したんだけどさ』
「代わってもらってもいい?」
『了解、ちょっと待って』
 お母さんが電話に出るまで少し時間があった。
『もしもし?』
「あ、お母さん? 連絡してなくてごめんね。今秋斗さんと一緒にいるの」
『唯から聞いたわ。夕飯の時間は気にせず、ちゃんと話してらっしゃい』
「……お母さん?」
『ん?』
 まだ記憶が戻ったことは話していない。
 でも、なんだか知っているような気がした。