せっかく得た俺のポジションを取り上げてくれるな……。
 その場所を俺から奪うな――。
 ……いや、奪われたのなら取り戻すまでか?
 自分から手を伸ばし、その手を掴むまでか?
 逡巡しているうちに歌は終わっていた。
 昇降機が下りるとき、佐野姉妹の片割れ――水色のドレスを着たほうに声をかけられた。
「君、迷走中?」
「あ! 確かに! 迷い走るほうのメイソウ中っぽかった!」
 ピンクのドレスを着た女が指を立てる要領で弓を立て、楽しそうに笑った。
 迷走中、ね……。
 言いえて妙だが的を射ている気がした。