事前の曲情報もなければ、そんなステージでのアクシデント。
 その照明サイドに波に乗るまでの必要最低限のプラン提示。
 朝陽の頭の回転ぶりに自分の口元が緩むのを感じた。
 朝陽の制止が解除され、俺は一定速度で鳴るモニター音に合わせて小さい数から順に四拍を二回数えた。
 九拍目から演奏がスタートし、朝陽のプランどおりに照明が動き出す。
 波に乗ってしまえば水を得たも同じ。
 あとはやりたいように動くだろう。
「あれは完全復活だね」
 モニターを見ながら朝陽が言う。
 その言葉に心の中で「そうだな」と返した。