「私には、家と学校しかなかったよ……」
「……わかってる。だから、だよ。世界が狭い分、そこから与えられる打撃の比重は重くなる。でも、今からでも遅くないから。世界はいくつか持っていたほうがいい」
 佐野くんは一息つくと、
「でも、今も学校と家だけ? 御園生の中で学校は一括り?」
 一括り……?
 言われている意味がわからなくて佐野くんの顔を見た。
「学校にも色々ある。クラスや生徒会、それから部活。御園生は学校の中にいくつの世界を持ってる? 少し考えてみてよ」
 クラス、生徒会、部活――。
 それぞれの場所にそれぞれの顔が浮かぶ。
 みんな大切な人――。