友達が好きだった女の子が自分を好きだとわかった途端に、今まで友達だと思っていた人の態度が豹変したこと。
 総体で優勝してから、自分を見る周りの目が変わったこと。
 友達だと思っていた人間が、妙に媚びてくるようになったこと。
「こういうのさ、先生や大人に言ってさくっと解決できるものじゃないんだよね。でもって、俺が変わるとかそういう問題でもなくってさ、やってるやつらの意識が変わらない限りずっと続く。話してわかる人間もいればそうじゃないやつもいるわけで……。そういうものなんだ」
「……佐野くんも誰にも言わなかったの?」
「……言わなかったのか言えなかったのか、ちょっとわかんないや。ただ、俺には陸上部のほかに友達がいたし、学校外にも友達がいた。他校の陸上部の人間とも交流あったし……。ショックは受けたし悔しい思いもした。でも、御園生ほど比重は大きくなかったと思う。俺は御園生みたいに絶対的なひとりじゃなかったから」