「別に早起きして来たとか、そういうんじゃないよ。俺、テスト期間中で部活動が禁止されてる期間でも毎朝起きる時間は変わらないし、その期間は家の周りを走ってるから。五時過ぎにはランニングに出て、六時には帰ってきて庭で整理体操。六時半には朝飯。七時には家を出れる状態。それが俺のテスト期間の朝」
 早朝ランニングの時間が蒼兄と一緒……。
 佐野くんはそれ以上の前置きはなしに、「あのさ」と話し始めた。
「人が集まるところって、必ずしも楽しいことばかりじゃない。嫉妬や足の引っ張り合い、そういうのは俺も経験済み」
 佐野くんは話してくれた。過去にあったいくつかのことを。
 大事な記録会へ行く時間が変更になったと言われ、その時間に行ったら短距離の記録会が終わっていたことや、試合前にスパイクを隠されたこと。
 明らかに、仲間であるはずの部員の誰かの仕業なのに、誰一人として口を割らなかったという。
 それが一度や二度ではなかったこと。