「……さ、そろそろ足もあたたまったよね?」
 そう声をかけると、彼女は湯船の中で足をちゃぷちゃぷとさせ、コクリと頷いた。
 洗面所を出て歩きながら彼女に提案。
「少しお昼寝したらどうかな? 本館の部屋に戻る? それともここで休む? どっちがいい?」
 全部俺が決めるのではなく、彼女に選んでもらえばいい。
 提案したことに対して、彼女が答えを出してくれれば、俺は自分を押し付けることはしないで済むから。
 俺にとって、「提案」というのはとても便利な方法だった。
 彼女は少し悩んでから、
「……本館へ戻ります」
 と、俺を追い越した。
 その表情は無表情――。