そして、受け取ったタオルを両手でぎゅっと握って顔へ当てる。
 やっぱり、自分の胸で泣いてほしいと思ってしまう。
 でも、今はやめておこう。
 今は、俺の体温よりそのタオルのぬくもりのほうが彼女に寄り添える気がしたから。
「せっかく連れてきてもらったのに、ごめんなさい……」
 不鮮明な声が響く。
 そんなこと、どうでもいいのに……。
 俺は写真なんてどうでもよくて、ただ君と一緒にいたかっただけだ。
「翠葉ちゃん、今回ここには療養に来たんだよ」
 ここという場所で過ごした時間を思い出してほしいというのは俺のエゴであり、静さんの仕事上の都合。
「君は身体を休めるためにここへ来たのであって、写真を撮りに来たわけじゃない」
 君はここへ療養を目的として来たんだ。
 自分にも言い聞かせるように話す。