反応がないこと、抵抗をされないことを喜んでいいのか悪いのか……。
 諦めたのか慣れたのか……。
「こういうの、だいぶ慣れたのかな?」
「え……?」
「前は、こんなにおとなしく抱き上げられてはくれなかったんだよ」
 すると、急にスイッチが入ったかのように慌て始めた。
「っ……今だって大丈夫なわけじゃないですっ。でも……」
 でも……?
「秋斗さん、あたたかくて――」
 俺の胸もとを押さえていた左手がくしゃり、とシャツを握る。
「……くっ、俺で暖が取れるならいくらでも?」
 そう答えると、彼女の頬が少し赤らんだ。
 その仕草や表情にいつもの「彼女らしさ」を感じほっとする。
 バスルームで彼女を下ろすと、床の冷たさに片足を上げた。
 まるで、司の家の犬、ハナみたいだ。