「司が大丈夫かって心配してたわ」
 十階から戻ってきた湊先生に開口一番で言われた。
 司先輩が……?
「今日はこっちに帰ってきているんですか?」
「今、うちに戻ったらいたわ。翠葉の様子が気になって見にきたみたいだけど、人が多そうだからってやめたみたいね」
 そうなんだ……。
「一週間くらい休ませるからその間に顔を出すように言っておいた」
 あぁ、やっぱり一週間くらいは休まないとだめなんだ。
「先に湊に訊けば良かったわね」
 栞さんの言葉に苦笑いを返すと、
「何よ」
 湊先生が凛々しい眉をひそめて訊いてくる。
「今、明日学校に行くかって話をしていたところなのよ」
「翠葉、気持ちはわかるけど数日は無理よ? それは翠葉が一番よくわかっているでしょう?」
「はい、すみません……」
 湊先生は若槻さんが手に持っていたものを受け取ると、手際よく手首に巻きつけてくれた。
「さ、長居は無用。秋斗も若槻も帰るわよ」
 と、湊先生はふたりを立たせた。
「若槻さんっ、スープ飲ませてくれてありがとうございましたっ」
 慌てて言うと、にこりときれい笑った顔が振り返る。
「どういたしまして、お姫さん」
「あっ、わ――ごめんなさい……おにいちゃん」
 小さく口にして、しゅぅ、と顔が熱くなる。