「……誰もいるわけないか」
 そのまま斜め前のナースセンターへ行き、藤原さんに声をかける。
「少し電話してきます」
「……かまわないけど、誰にかけるのか訊いてもいいかしら?」
 どうしてか、藤原さんの視線は私とカウンターの中を行き来する。
 いったい何を見ているのだろう、とカウンターに近寄る。
「えと、司先輩に電話しにいこうと思っていて……」
 答えると、「ペナルティ……」とカウンターの中から声がした。
 その声は藤原さんのものではない。
 恐る恐るカウンターの中を覗き見ると、さっきまで屋上で保険屋さんをしてくれていた司先輩がいた。
「で、ペナルティってなにかしら?」
 藤原さんがにこりと笑って尋ねると、先輩は短く「企業秘密」と答えた。