お父さんは私を抱きしめながら、
「いやさ、年頃の娘っていうのはやっぱり嫌がるものなのかな、とか考えるんだぞ」
「そういうものなのかな? でも、私はまだ大丈夫みたい」
「……まだ、なんて意味深発言だな」
「だって、この先はわからないもの」
「……そうだな。この先には何があるなんて誰にもわからないよな」
 そう言うと、身体を離して頭に手を置いた。
「翠葉が翠葉らしく、のびのびと育ってくれたら父さんはそれだけでいいよ」
「私は……お父さんたちに楽しく仕事をしていてもらいたい。で、出来上がった建物を観に行きたい」
「うん。今の仕事はすごいぞー! 十一月には最終確認段階に入るから、その頃には翠葉を連れていけるよ」
「楽しみにしてる」