すごく意外だと思った。でも、心のどこかで司らしいとも思った。
 司はあまり自分から人の中には入っていこうとしない。
 それは単に面倒臭がり屋って話だけれど、人を見て何も考えてないかというとそんなこともない。
 だって司は、どんな人間でも適材適所に配置する能力がある。
 それはつまり、観察力があるっていうことで、人の本質を見抜く力も持っているということ。
 同時にその人の本質を引き出す力も持っている。
 そんな司だからこそ、こういう行動なのかな、って思ったり……。
 だとしたら、司は翠葉の本質をどう見抜いているんだろう。
 翠葉からは何を引き出すのかな。
 俺はそんなところに興味があった。
「なぁ、司」
 司は無言で俺を見る。
「たとえばさ、ものすごく仲のいいふたりが同じ女を好きになったとして、俺はどっちを応援すべきかな」
 司は口につけていたカップを慌てて離し、ゲホゴホと咽た。