「でも、負けるつもりも譲るつもりもない」
 っていうかさ……。
「現時点でおまえ負けてるじゃん?」
 無言の司が視線だけを寄こす。
 しまった――俺としたことが心の声がそのまま……。
 思わず身構えたものの反撃は来なかった。
 司にしては珍しく、視線を宙に彷徨わせ、
「どこからだろう……」
 ひとり言のように呟いた。
 何が、と問いたいのを懸命に我慢する。
 今は考察中のようだからしばし待てっ。待つんだ、俺っ!
「……翠を好きだと自覚した瞬間は確かにあったと思う。負けたくないとか、人に取られたくないとか……。でも、いつからか翠が笑ってればいいかなって思うようになった。……今は、それを求めて動いてるだけなんだ」
 司は俺に言ったわけじゃないと思う。
 たぶん、自分でもよくわかってないんだ……。
「司はとにかく翠葉が第一なんだな?」
 それが感想。