最近はドアを閉めてくれるようになった。
 ドアの外で女の人の話し声が聞こえる。
 インターホンなしでこの家に出入りが出来るのは栞さん。
 だとしたら、一緒にいるのは湊先生だろうか。
 栞さんの旦那様も一緒なのかな……。
 少しすると湊先生が入ってきた。
 もうこの頃は足音で誰かがわかる。
「点滴するわよ」
「もういい……」
「もういいって何よ……」
「点滴、いらない……」
「あんた、ただでさえ脱水症状に加えてエネルギー不足なのよっ!?」
 怒鳴られることにもだいぶ耐性がついたかもしれない。
「それ、しなかったら、いつか死ねる……?」
「……あんた、自殺願望はないって言ってなかった?」
「……それは、少し前の話。今は……自分が楽になりたい。……もう、その場凌ぎの注射も、点滴も、いらな――」
 先生が天蓋の中に入ってきて両肩を掴まれた。