十階に着き、ひとつの病室の前で軽くノックをして中に入る。と、
「何……俺のオムツ姿でも笑いに来たわけ?」
「……別にそんなの珍しくもなんともないし」
「ふーん……」
「そんなの気にしなくても三日もすれば取れる」
 秋兄は管だらけの状況が嫌ならしい。
「で、おまえはなんで来たの?」
「別に。来なければ良かったと思ったところ」
 本当、自宅待機で連絡を待っていれば良かった。
 そしたらあの女にだって会うことはなかっただろう。
「輸血、足りてるんだろ?」
「足りてるって父さんから連絡があったけど?」
 秋兄はなおさらわからないって顔をした。
 ……一応心配だから来たんだけど。
 そういう考えには至らないのだろうか。
 ま、吐血して一時ショック状態にあった人間にも関わらず、これだけ喋ることができば問題もないか……。