昨日、あんなに体が冷え切っていたのだから、風邪でもひいていないだろうか。
 そもそも、昨日の今日で急に働かせたりして、体に響かないだろうか。

 ずっと、そんなことを思いながら美葉の様子を窺っていた。

 どうやら、今のところはとりあえず元気なようだ。
 案外、丈夫なのかもしれない。


 貴之は立ち上がり、自分達用にコーヒーを淹れ始めた。

 しばらくして、美葉が戻ってきた。
 なぜか不思議そうな表情をしている。

「どうした?」
 貴之が尋ねると、首を傾げたまま美葉は答えた。

「なんか、黒い人が店のまわりウロウロしてる」

「黒い人? シゲさんか?」

「肌の色じゃなくって、服の色とか、全体的に。<あっち>の関係者、みたいな」