泣いたのか?
 なんで……。

「……あ」
 
 もしかして、淋しかった、のか?



 美葉が一体何を背負い込んでいるのかは、まだわからない。

 ただ、わかることは、今、彼女の帰る場所はないのであろう、ということと。

 彼女がまだ若い女性であるということ。


 貴之は無意識に、美葉の頬を自分の手のひらでそっと包み込んでいた。

 彼女は、無防備に……まだ静かな寝息をたてながら瞼を閉じたままだったが、ふと微笑んだ、ような気がした。



「貴之! 美葉がいない!」