あれはすべて夢幻でした、だから忘れて下さいね。


 そんな言葉で騙されない。
 そのくらい、現実的な存在感を持って、ここにいたのだ。


 龍星はぎゅっと、彼女の手を掴む。
 空を掴もうとしている、その小さな手を。

「本当に、ここに、いたんだ」

 毬はかみ締めるように言った。
 いつもより低い、まるで少年を思わせるような声で。