「その顔は、信じておらんな。まあ、仕方がないかの。そんなことよりも将棋をせぬか?」

「今は、そんな気分じゃねぇ」

「ふむ。随分と荒れておるの? そんな状態で、春風ちゃんに会ったら驚かすだけじゃぞ」

「会う、資格なんてねぇよ」
「人に、会うのに資格なんて要らんものじゃて。わしも戦争から帰ってきたとき、誰にも会う資格は無いと考えて、だれにも会わなかったが、今じゃ後悔しておる。おまさんには、こんな下らない後悔をして欲しくないんじゃ。それに、春風ちゃんが寂しがる。春風ちゃんのためと思って、会って欲しい」