「それじゃあ、死に急ぐような
 ものじゃないか…。
 そんなの不幸になるだけだ!」
「そうですね。
 戦争で死ぬことだけは
 決まっているみたいです。
 だけど、私は不幸なんかじゃないです。」


何故そこまで、
言いきれるのだろうか。
俺よりも、マチさんの目は
遥かに強い目をしていた。


「確かに戦争は悲惨で、
 人々の命も儚くて、
 毎日辛い日々ばかりです。
 それでも私は昭和の時代に
 生まれました。
 意味があって生まれたのです。
 戦争時代に生きた人は、
 人の命の大切さを
 誰よりも知っている、
 戦争の醜さを誰よりも
 知っていると思うのです。
 それって、素晴らしい
 ことだと思うんです。
 だから私は、昭和時代に
 生まれても、
 不幸ではありません。」