「この時代なら、戦争はないし、
人もたくさん死ななくて済む。
学校だって行けるし、電車も、
テレビも…不自由ない
生活が送れるんだ。」
「望さん、あなたが
私の立場だったら、
家族や友人を置き去りに
してでも、自分が幸せに
なることを選びますか?」
「それは…」
マチさんの言葉に、俺は
何も出てこなかった。
言葉がつまってしまった。
「私が元の世界に戻る理由は、
大切な人たちが
待っているからです。」
マチさんの目を見たら、
彼女の本気が伝わってきた。
マチさんは、本当に元の世界へ
帰ることを望んでいる。
例え自分が死ぬかもしれないと
知っていても、
帰る道を選ぼうとしている。