「しかし、私たちの時代の国は
戦争のために、お国のために
命を捨てるのが普通です。
寧ろ、それに逆らうと人は
非国民と言われてしまうんです。」
「非国民?」
「戦争に反対する人のことです。
戦争に反対すれば、非国民とされ、
迫害を受けることも、多いです。
だから、私もそれを恐れて、心では
思っていない事を…。」
それで、あんなことを
言っていたのか。
だけど、これであの言葉が
本心ではないことが、わかった。
それを知った俺は少し、安堵した。
「良かった。マチさんの本音を聞けて。
平成時代なら、そんな考えを捨てても
平気だよ。誰も責める人はいない。」
「望さん…。」
「俺は思う。お国なんかよりも
マチさん一人の命の方が大事だよ。」
マチさんは、静かに涙を落した。
初めて見たマチさんの泣き顔。
不覚にも、俺は、そんなマチさんの
姿を見て、綺麗だと思った。
そして、俺はマチさんが心から
純粋に、好きだと思った。
守りたいと思った。
そう感じたら、俺はマチさんを
抱きしめていた。