「悟、こんなときに変な冗談
 やめよろ。洒落にならないだろ。」
「俺は冗談なんか言ってないぞ。
 お前こそ、頭大丈夫か?」
「悟…まさか玲奈のことを
 忘れたとか言わないだろうな…。」


悟の様子がおかしい。マチさんも
それに気付いている。
まさか悟まで玲奈のことを…。


「だから玲奈って誰だよ。」
「…まじかよ。」


玲奈のことを、
悟が忘れてしまうとは。
悟は、玲奈が好きで、絶対に
忘れないと思っていた。
しかし、甘かった。
やはり時代の流れには
逆らえないのか。
ならば、何故俺は玲奈を
忘れないのだろうか。


「望さん…。」
「マチさん…。」


じっと俺は、マチさんの顔を
見つめた。
そこでふと気がついた。
マチさんは、玲奈に似ている。
比べてみると、やはり顔が玲奈に
そっくりだ。性格は全く逆だが。


「悪い、悟。先に行っててくれ。」
「え?なんだよ。わかったよ。」


悪いけれど、悟には先に
学校に行かせた。


「まさか、悟さんまで、
 玲奈さんを忘れてしまうとは…。
 どうしてでしょうか。」
「何故俺とマチさんだけは、
 玲奈のことを覚えているか
 ってところだよな。」
「はい。」