マチさんが、あんなにも弱音を
吐いたあの夜。
あの日から、俺はマチさんに、
なんて声をかけたらいいか
わからない。


「望さん。おはようございます。」
「あ、マチさん。おはよう。」


マチさんは、俺だけに
話しかけるときは、
学校でも、敬語。


「望、マチおはよう!」


突然悟が、声をかけてきた。
挨拶をすることは、いつもと
変わらないのだが、俺は違和感を
一つ感じた。マチさんも、おそらく
同じように思っただろう。


「お前、急にマチさんを
 呼び捨てにしたな…。
 いつの間にそんな仲良く
 なったんだ?」


クラスメイトがいる前では、
呼び捨てで呼ぶが、今は俺たち
三人しかいないから、呼び捨て
でなくてもいいはず。それに
いつも「さん」付けで呼んでいたはずだ。


「何言ってんだ?お前。
 つーか、マチさんだなんて
 気持ち悪いな。お前ら
 幼馴染だろ?」
「は?何言ってんだよ。マチさんと
 俺は幼馴染じゃないだろ。
 幼馴染は玲奈だろ。」
「玲奈?誰だそれ。」


俺とマチさんは、思わず息をのんだ。
言葉が出ない。