「私の父は、今戦争に行っていて…
 だけど、今元気なのか、
 どうしているか
 連絡がなくて…生きているのかも
 わからないんですよね。
 それに、母も、姉も、無事でいるか
 不安で不安で…。」
「ああ。そうだよな。」
「向こうでは、みな、死にものぐるいで
 毎日を生きているというのに、
 私だけ、こんな贅沢していいのでしょうか。」
「時代が違うし、仕方ないことじゃないのか?」


俺がかけてやれる言葉も、
こんなことしか言えない。
自分が情けない。


「こんなに幸せが辛いなんて
 思いもしなかったです。
 贅沢は、私にはできない。」
「マチさんが悪いんじゃない!
 戦争がいけないんだよ!だから
 今の時代だけは、贅沢したって
 構わないよ。だからマチさん…
 自分を責めるのはやめるんだ。」
「望さん…ありがとうございます。」


電話は、これで終わりだった。
お互い最後に「おやすみなさい」と
だけ言って、電話を切った。
俺には、何もできなかった。
それが悲しくて、ため息をついた。