5歳の夏―


僕は両耳から聞こえてくる


うるさすぎる蝉の声で目が覚めた。


とてもいい目覚め、


とは言えないが、嫌いではない。


そんないつもの朝だった。


「おはよう、祢音(ネオ)」


いつもの朝に、いつものように


母が微笑みながら僕に話しかける。


「おはよ、お母さん」


僕もいつものように微笑み返す。