「……おいしい」
「だろ?」
天ぷら蕎麦なんて久しぶり。
「ちゃんと食えよ?もう少し太めが俺好み」
彼の好みはともかく、
こんなまともなご飯、いつぶりだろう。
「やっぱ眼鏡取るわ。曇って見えねぇ」
笑ったのも、
セックスしたのも、
よく眠ったのも……
「なんで、あんな別れ方した?」
体を重ねて何度目かの夜、
そう聞いてきた彼の目はドキッとするほど優しかった。
でも……
やっぱり私の好きなのは、
別れたあの人の目だ。
「ひどい女だから……」
それでいいと思う。
でもこの人に、
酷い事はしたくないって思った。