17時半過ぎに店を出て、


自宅がある自社ビルへと向かっていた。


夕暮れに家路を急ぐ人々の中、


私は美しき魔の手に捕らわれた。


茜色の空が濃紺色の夕闇に


のまれていく様を背に感じながら。


大通りから人気の少ない路地へと歩かされ


何処へ連れて行かれるのかと心配になり


彼の腕を掴んで顔を見上げた。


何度見ても“綺麗な顔”という言葉が当てはまる。


要とは違うタイプのイケメン。


ううん……美男子。


少し抽象的な顔のつくりがそう思わせる。


私が見つめていると、


「何?……杏花さん」


「………」


ダメダメ……この人は私の敵なのよ。


しっかりしなきゃ……。


この人と馴れ合ってる場合じゃない。


小さく息を吐き、前を見据えると