「そういえば、これ。」

博士は思い出したように、紙袋を取り出した。

「カズヤ君から」

カズ君…。

カズ君とは、あの葬式の日「それじゃあ」と言って帰っていったきり会っていない。

田舎に帰るなんて言っていたから、もしかして?なんて思っていたところだ。

紙袋を開けると、携帯電話とメモのようなものが入っていた。

カズ君の携帯だった。

『持ってて。機種変更したから使えないけど、留守電は聞けるから。

それと、いろいろありがとね。楽しかった。また、いつか会おう。』

素っ気ないサヨナラの挨拶だ。切なくも寂しくもなれない。

電源をいれて留守電を聞いてみる。

夏休み初日に聞いたリョウちゃんの声が聞こえてきた。

「なるほど。」

声が漏れていたらしく、博士がニヤケながら頷いていた。