博士の行動はとてもテキパキとしていて無駄がなく見える。

とても頼もしく見える。でも、だからこそ見えてしまうこともある。

ワンパターンなのだ。

同じような動きをさっきからずっと繰り返している。そしてそれがどういう意味なのかを僕は気づき始めていた。


もう、やるべきことがないのだ。 きっと・・・。


かすかな命をつなぎとめることで、状況が良くなることを待ち続けているのだ。

博士や看護士さんたちの息が荒くなっている。もう何時間も動き続けているのだから体力をかなり消耗しているのだろう。

でも、誰も諦めない。諦めずにつなぎとめている。

そして、もう一人。

動き回る人たちの真ん中で、確かな活動を続けている人がいる。

リョウちゃんだ。

リョウちゃんは、かすれるような声で呼びかけに応えたり。指先を動かしたりしている。計り知れないくらいの意思の力でつなぎとめているのだ。

この動かない足を一歩前に踏み出せないものだろうか?

あの、細く白い手を握り締めてつなぎとめるのは僕の役目なんじゃないだろうか?