同じような光景。同じようなやり取りが何度も繰り返される。

リョウちゃんはまったく動かない訳じゃ無い。

時々、呼びかけに応えるように小さく呻いたり、腕を動かしたりしている。

僕は今、自分が置かれている状況が分からない。

カズ君は僕の肩を力いっぱい握り締めている。

痛い。けど、振りほどく事も出来ない。

ガチャン!

看護士さんの一人が何かの機材を落とした。

「何やってるっ!」

博士が博士らしくなく叱り飛ばす。

一瞬辺りが静かになった。

博士は、スーッと大きく息を吸い込むと、一気に吐き出した。

「まだだっ!諦めるな!」

その号令ひとつで、また景色が動きはじめる。

でも、僕は動けない。

止まったままだ。

この体を動かす事ができない。