「結婚したいんだ」

しばらく続いた沈黙の後。カズ君がつぶやいた言葉は、みんなをア然とさせた。

「リョウコさん。いろいろ考えたんだ。結婚してほしいんだ。」

リョウちゃんは天井を見たまま動かない。

「リョウコさんと一緒にいたって証がほしいんだ。たっくんの事も任せて欲しいし」

おおよそカズ君らしくないしゃべり方をしてる。

顔を覗きこんでみたら、涙が溢れている。

スゴイ勇気だと思った。

これは二度と会えなくなる人とずっと一緒にいる決断だ。

一回りしか違わない人間の父親になる決断だ。

カズ君はボーっとしているようで、物凄くいろいろな事を考えている。

そのカズ君の決断に僕も胸が熱くなる。


でも。


「それは出来ないわ。」


そう。それは出来ない