博士が入って来た。薬を変える時間らしい。

リョウちゃんは慣れた手つきで、パジャマの袖を捲くり上げた。

白く細い腕に点々と青いアザが浮かび上がっている。

博士は、そこに張ってあるシールを剥がすと、新しいシールを貼りなおした。

痛々しいその光景は、頭の中にこびりつく。

カズ君が急に黙ったので、部屋の中がやたらと静かに感じられた。

静かな部屋の中に、リョウちゃんの粗い呼吸の音が際立ってヒビいている。

「それでさあ」

唐突に話しを繋ぎ合わせるように、カズ君がしゃべり始めた。

「それでさあ…」

しゃべり始めたけど、言葉が続かない。

このまましゃべらないでほしいと思った。きっとどんな言葉も怖く聞こえてしまうだろう。

結局、カズ君はベットの傍らに座ってリョウちゃんに笑いかけた。

カズ君の役割をサラリとこなした。