唐突な博士の告白に僕は、聞き返す事も出来なかった。

「命を助けたくて医者になったのに、救えない命ばかりが手に余る」

泣いているのかな?僕は思って下から覗きこんだ。

覗きこんだ僕と目があった博士は、泣くどころか笑いかけてきた。

「でも、辞めないよ」博士はジッと僕を見てくる。

「もがくべきなんだ。どんなに苦しくても」博士は立ち上がった。

「リョウコさんの事も精一杯もがいて見せるよ」

カッコイイと思った。博士は、命を守る仕事をがむしゃらに頑張れる人なんだ。

もがくべきなんだ。僕もそう思う。

いつの間にか救急車が病院の前まで来ていた。

病院の中から人が出て来て、辺りが騒がしくなる。

博士も救急車の方に走って行った。後ろ姿はあまり頼もしいとは言えないけど。でも力いっぱい走って行った。