博士は、拾ったパックを近くのゴミ箱に捨てると僕の横に座った。

座ったけど、遠くをみたままずっと黙っている。

気まずい僕は立ち上がりたい。

けど、僕も黙って座っていてみた。

「僕の力不足で」博士がポツリと話し始める。

「僕の力不足で、死んでしまった患者さんが何人もいる」博士は喉から声を絞り出すように話した。

「あんまりいいことじゃないんだ。いちいち悩んでたら医者なんかやってられない」昔からそう言われ続けていたそうだ。

「でも、正直にいたいと思うんだ」自分勝手かも知れないけど「どんなに困難な患者さんでも、直したいと思うんだ」

遠くから救急車の音が聞こえる。この病院に向かっているのかも知れない。

博士も音の鳴る方を見てた。目がオモイッキリ真剣だ。

「今回の事で医者を辞めようとおもった」

救急車の音が近付いてくる。