「僕がしたのは、結局開腹して閉じただけだった」

何を言ったのかわからないでいたら、カズ君がガバッと立ち上がった。

「じゃあ、何もしなかったのか!?」

そういうことなの!?カズ君の剣幕で意味が半分くらい分かった。

「まあ、下手に傷をつけても体力を奪うだけだしね」医師として最善の選択をしたと博士は言い、カズ君を睨みかえした。

カズ君はチッと舌打ちをするとまた座った。

「ただ。無力だ。」博士はまた怒っているのか泣いているのか解らない顔をしている。

「タクくん」僕をよんで博士は深く息をついた。

「君のお父さんの手術も僕がしたんだ」

初めて聞く話しだ。

「あの時も、リョウコさんにどうしてもって言われて。」ただ絶望的な状況じゃなかったと博士は続ける。