「ゴメン。タク」リョウちゃんのつぶやいた言葉はこの部屋の時間を止めてしまったようだった。

静まりかえった部屋の中に、リョウちゃんの淡々とした声だけがひびく。

からっぽの部屋にひびくその声は、濡れたティッシュペーパーみたいに僕にまとわり付く。

「私、ガンになっちゃった。博士に手術してもらったけどもう直らないんだって」あと2ヶ月くらいだって。リョウちゃんはこっちを見ないで言った。

最低最悪の夏休みだ。僕はガク然とした。

だってどうしようもないじゃないか!?始まってまだ1週間なのに、僕はまだ宿題しかしてない。

リョウちゃんがガンだって!?誰か何とかしてくれないもんなのか?

そもそも僕にはお父さんだっていないんだぞ?おかしいじゃないか?