「僕は僕の判断で手術を中断しました。」博士は苦渋の決断であったことを体全体で表現しているようだった。

「ごめんなさい。リョウコさん」

不意に博士はいつもの博士の顔に戻る。

「僕は、兄さんの時だけでなく、また同じ過ちをしてしまった」

過ちなんて、そんな言い方してほしくないものだ。

「身内に2度もメスを入れておきながら。2度とも助けることができなかった」

博士は傷ついていた。重すぎる期待にボロボロにされていたのだろう。私はこのとき初めて博士にとてつもない十字架を背負わせてしまっていることに気づいた。

1度だけならず2度までも。

私のだんなと、私と。

私は優秀で頼りになる、この義弟に2度も大事な命を預けてしまったのだ。